なぜマレーシアで不法移民が生まれるのか

最近になって、名前を聞くことも多くなってきたマレーシア。友達の中にも、旅行で行ったことがあるという人が多い気がします。それもそのはず、マレーシアは首都のクアラルンプールを中心に急成長を遂げていて、僕たち外国人が行くような観光地はとても発展途上国とは言えないほどの発展をしています。

しかし、そんな急成長の裏には、多くの問題も隠されています。その中の一つが不法移民問題です。マレーシアには外国人労働者が130万人近くいると言われていますが、それは合法的に働く移民の数です。この他に不法でマレーシアに入り働く、いわゆる不法移民と呼ばれる人たちは200万人近くに登ると言われているのです。

今回は、僕がボランティアをしているマレーシアのサバ州でどのように不法移民が生まれているのかを現地で1年間活動していた先輩に聞いたので、自分なりにまとめてみました。


サバ州は、首都がある半島ではなく、ボルネオ島という島にあります。

 

マレーシアに来る理由はひとつではない

人々が移民する理由は常にひとつであるとは限りません。サバの場合も同様に、様々な理由で人々が移り住んできます。主に以下の3つの理由があると言われています。

1. フィリピンで起きているミンダナオ内戦の影響

世界史を勉強された方は覚えている方もいるかと思いますが、フィリピンはかつてスペインに統治されており、その影響でキリスト教の割合が非常に多いです。しかし、フィリピンの南部の人々は改宗せずにイスラム教を貫いたため、北部のキリスト教徒と南部のイスラム教徒で紛争が起きてしまいました。それがミンダナオ内戦です。その紛争から逃れ、海を渡ってイスラム教の多いマレーシアに入ってきた人々が不法移民となって住んでいるのです。(正式に難民として認められ、合法的に住んでいる人もいます。)


すぐ右上にはフィリピンがあるのがわかりますよね。

2. 水上で暮らすスールー族

フィリピンとマレーシアの国境が定まる前から、フィリピン南部とボルネオ島北部を行き来して暮らすスールー族という民族がいました。そして、国境が定められた際に、たまたまボルネオ島にいた人々は「マレーシア人」、フィリピンにいた人は「フィリピン人」となったのです。実際にサバ州には多くの水上集落があり、海の上に家や橋を建てて暮らしています。彼らの中にも同様に不法の人もいれば合法の人もおり、外部からは全く区別がつかないというのが現状です。


水上集落

3. 仕事を求めて

どうやら、3つの理由の中でこれが最も大きな理由なようです。というのも、フィリピンとマレーシアでは物価の差が3倍も違うと言われています。そのため、単純に計算すればマレーシアで働けば3倍の収入が得られるということです。マレーシアでは建設業などで人が不足しており、いわゆる3K労働(きつい、汚い、危険)に従事する不法移民が多くいます。

そもそもどうやってマレーシアに来るのか?

近年入って来る不法移民の多くは3の理由が多いので、ここからは3を例にとって不法移民の動きを追っていきます。

1. ブローカーの存在

フィリピン南部の島々に住む人々は主に農業漁業に従事しており、北部の大きな島に売るなどして生計をたてています。しかし、多くは市場の価格よりもかなり安く買われてしまうため生活は常に厳しい状況です。そこで、マレーシアへ渡ることを助けるブローカーたちがいます。彼らはフィリピン南部の島から最も近いセンポルナというマレーシアの街まで500リンギット(15,000円)程度で運んでくれるんだとか。


島に暮らす人々は、サンポアンガという右上の街に農作物などを出荷してるらしい

2. 都市部への移動

センポルナについた不法移民の多くは、センポルナの北に位置するサバ州で2番目に大きな都市であるサンダカンという場所へと移動します。移動はバスを乗り継いでするのですが、300キロ以上の道のりです。ここまで来ると、僕らでは想像できないような大移動です。笑

3. 仕事を求めてさらに移動

サンダカンは工業が盛んな地域です。そのため、多くの雇用者は一度雇われると長期的に働くことになります。そのため、雇用する側もあまり不法移民を取りたがらず、労働ビザを持つ合法の労働者が多いとされています。つまり、非合法的にマレーシアに渡ってきた移民たちはサンダカンでは仕事にありつけないのです。そこで、彼らはさらにサバ州で最も大きな都市であるコタキナバルへとさらなる移動をするのです。先ほど述べたとおり、コタキナバルでは都市開発が進んでおり、建築業では多くの労働者が必要です。建築業は一度建ててしまえばおしまいなので、短期的に雇い、建設が終わればすぐに契約を切れる不法移民は好都合なのです。

どうやって仕事を見つけているのか?

とはいえ、どうしてコタキナバルには仕事があることを知り、最終的に雇ってもらえる場所を見つけているのか疑問に思いますよね。どうやら、彼らの間にチャットグループのようなものがあり、仕事を探している不法移民と労働者を必要としている人の間でやり取りが行われているのだとか!そのチャットによって指定された場所に向かい、仕事場の近くにひっそりと隠れながら暮らすのです。(※彼らの村は安全上見せることはできませんが、普通に生活していてはなかなか見つけることはできません。)


コタキナバル!

給料は意外ともらっている

不法移民だし大した給料ももらっていないだろうと思いがちなのですが、実は月に1,000リンギット(3万円)ほどもらっているそう。日本の物価に合わせれば9万円程度で、僕が現地で泊まっていたホテルの従業員は月給900リンギットだと言っていたので、実はそれなりの給料をもらっていることがわかります。

不法移民たちの生活は

先ほどから言っているように、彼らの肩書きは『不法』移民です。そのため、警察に追われ、捕まれば不法移民用の収容所に連れてかれてしまいます。ただ、お金を払えば出してもらえるのだとか。どうやら、警察の内通者もいて、パトロールに来る日をあらかじめ把握して、隠れたりもするそうです。

しかし、問題なのは子どもたちです。彼らは当たり前ですが学校に通うことは許されていません。ましてや、将来の夢も不法である以上叶うことはありません。そして、多くの子どもたちは幼いうちから働くことになり、ドラッグや盗みをはたらくようになっていく子どもも多くいます。その結果、現地の人々からも煙たがられ、不法移民問題は全く解決へと動き出しません。コタキナバルにはそういった子どもたちのためのボランティアの学校がいくつかありますが、十分な教育とはとても言えないというのが正直なところです。

誰が正義なのか

僕もこの問題を解決したいと考えている人間のひとりですが、難しいのは「何が正義なのか」ということです。現地の人にとって、海外から非合法的にやってきて、自分たちの土地の治安を乱す不法移民たちは決して受け入れられる存在ではありません。そして、マレーシアに渡ってきた不法移民たちは自らの意思で海を渡り、不法移民として生活しています。そんな彼らを助けること自体、正義と言えるのでしょうか?しかし、一方で現地のマレーシア人にとっても建設現場で働く不法移民たちは必要不可欠な存在であることは確かです。そして何より、不法移民として生まれてきた子どもたちは、生まれた時から警察に追われ、勉強したくてもできず、自分の夢を叶えるチャンスすらないのです。そんな彼らの環境は、自分に置き換えて考えてみるとなんだか理不尽なように思えてならないわけです。結局、何をどうすることが正しいのか、答えは人それぞれですが、何もしないで手を拱いているよりも、自分ができることをしてみたいなと思うのです。

少なくとも言えることは、日本という国で、なんの不便もなく暮らす僕らが、気づかないうちに失っている物を、気づかせてくれのもまた彼らなのですよ。


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